[NEWS] 「ICT積極的に」「支援あれば進めたい」が計70%以上-横浜市内の障害者関連事業所などのアンケート

新型コロナウイルスの感染拡大「第2波」に見舞われていた2020年8月、横浜市内の障害者関連事業所などを対象に情報通信技術(ICT)導入や感染防止につながる製品の制作などに関するアンケート調査が実施されました。その結果、ICT化について、「積極的に進めたい」「支援を受けられるなら進めたい」との回答が約7割でした。回答には、制作している製品などの売り上げが減少し、新型コロナの感染への不安も抱える現場の様子が浮かんでいました。

このアンケートは、横浜の市民や企業、大学、行政が連携して新型コロナウイルスに向き合うたすけあいプラットフォーム「#おたがいハマ」の活動の一環として、NPO 法人横浜コミュニティデザイン・ラボが8月3日から8月19日まで、市内の障害者団体の協力を得て実施。132件の回答がありました。

 

回答事業所の70%が製品など製作、多くが販売減少に直面
回答した事業所などのうち、約70%が製品などの制作・販売を実施。マスクなど新型コロナの感染防止につながる製品を制作しているところも25%(33カ所)ありました。

Q2. 事業所で製品等を制作・販売していますか
(132件の回答)

販売面では課題があり、「作業が商品を売ることで完結しているので、商品を売る場所がほぼなくなり、工賃収入が大幅減となっているので、販売ルートの再構築が急務となっている」「商品の販売が滞り悩んでいます」などの声がありました。

「同じ場所にいないとできない活動」 ICT化の課題
今後のICT化については、「積極的に進めていきたい」が18%、「支援を受けられるなら進めていきたい」が55%で、合わせて7割を超えていました。「支援があっても積極的に進めようとは思わない」は16%でした。(複数回答???)。「求めたい支援」については、「ICT機器導入の資金的支援」が46%で最も多く、「テレビ会議の使用法」が42%、「ネットワーク構築」「日常的な支援」がともに38%と続きました。「導入するICT機器の選定」も27%あり、ICT化を進めたくてもなかなか難しい状況がうかがえます。

Q9. 今後のICT化について、どのように考えていますか
(126件の回答)

Q10. 今後、求めたい支援は何ですか
(複数回答可、108 件の回答)

テレワークについては、「以前から実施している」が2%、「今回導入した」が36%でしたが、「検討したが断念した」が18%で、「考えなかった」が51%と過半数でした。導入しなかった理由では、「同じ場所にいないとできない活動・業務」が80%(66件)と圧倒的でした。

Q 17. テレワークの導入状況について教えてください
(130 件の回答)

新たにオンラインで始めたことでは、「関係先との会議」が53%と最も多く、「スタッフの会議」が44%で続いています。「利用者との相談・連絡」は20%で、「利用者さんとLINEのビデオ通話を利用してとてもよかった」という意見もありました。

Q19. 新たにオンラインで始めたことがあれば教えてください
(複数回答可、76 件の回答)

自粛生活で体調崩す利用者、不安の中で業務を続けるスタッフ
自由回答には、深刻な実態が浮かんでいました。

事業所のサービスなどを利用するかのどうかの判断に関して、「利用者の間で新型コロナに対しての不安が大きく、なかなか思うように通所が出来ていない方も複数いるので、その対処にも苦慮している」という状況のところがあった一方で、「”自粛”を選択できる方は全体の1割程度で、家族としては通所を控えたいが本人が『なぜ休みなの』『”自粛”を理解できない』ため、自宅にいることが難しいので通所させている」という状況もありました。

環境の変化による影響もあり、「新型コロナ以前に生活が戻る見通しが立たないことで、極度の不安を抱えている利用者がいる。そこまでの不安でなくても、対人関係に悪影響が出ている」「感染拡大防止のため在宅利用に移行した利用者が複数名いるが、在宅利用中に対人恐怖につながった方もおり、在宅利用者が通所利用に復帰できるか心配である」との声もありました。

自粛生活によって体調を崩す人がいる、「うつ」のような症状を訴える人がいるとの指摘はほかにもあり、「感染症リスクを減らそうとすると利用者の生活が成り立たなく別のリスクが生じている」状況がうかがえました。

そして、事業所側の状況について、「国はテレワークを推進していますが、利用者が通所する以上職員は出勤せざるをえない。(中略)重度の知的障がいがあることから、ソーシャルディスタンスおよび感染予防にも限界がある」「通所=不要不急の外出ではないが、職員は精一杯感染予防に努める一方で、『明日は我が身』の不安を抱えながら、支援に取り組んでいる」との回答もありました。

発熱した入居者がなかなか診察を受けられなかったとの報告やPCR検査を希望する回答もありました。

 

小規模事業所「大手の事業所と同じ基準では…」
ICT化に前向きな姿勢が見られましたが、現実には「ネットじゃないと情報が手に入らない、スマホやPCを持っていない場合、情報格差、情報難民化している(例:神奈川アラートってなにするの?新しい生活様式って具体的には?→ネットじゃないと情報が手に入らない)」との指摘もありました。

事業所等の中には小規模なところも多いことから、「大手と単体事業所を同列同基準で論じないで欲しい。(中略)個人店とファミレスで同じ事をしろというのは土台無理な様に、我々も職員・資金豊富な大手や医療系株式系バックの事業所と、手弁当で地域の人が集まって作ったNPOとは何から何まで違うのに、同じ基準を当てはめられても出来ません」との声もありました。

 

※このアンケートの回答および結果は、マスクや防護具などの感染防止の製品の配布やICT化の支援などに活用されました。