新型コロナウイルス感染拡大の「第1波」を受けて緊急事態宣言が出されていた2020年5月下旬から宣言解除直後の6月にかけて、横浜市内の障害者関連事業所等を対象に「新型コロナウイルス感染拡大に伴う福祉現場の状況に関する緊急アンケート」が実施されました。約70%が「職員等の疲労、不安、ストレス等が増している」と回答し、「利用者がふだんより減った」も70%を超え、「受注業務や売り上げが減少」という事業所なども58%ありました。また、約3分の1が在宅勤務やテレワークを導入済みで、今後の導入を検討しているとした回答も24%ありました。
アンケートは、横浜市の4つの障害者団体(横浜市障害者地域作業所連絡会、横浜市障害者地域活動ホーム連絡会、NPO法人横浜市精神障害者地域生活支援連合会、公益社団法人横浜市身体障害者団体連合会)が会員の事業所など444件を対象に、5月21日から6月1日まで実施。259件から回答がありました。
アンケート調査の結果、明らかになったのは、次のような点でした。
- 職員の疲労、不安、ストレスと利用者の困難な状況
回答した事業所の常勤職員は、2人以下が計43%、5人以下が計78%と小規模のところが大半で、施設・職員の多くは疲労や不安、ストレスを感じながら、事業を継続していました。利用者が日常の変化に戸惑っている姿も浮かび上がりました。 - 利用者や受注業務、売り上げの減少と回復への懸念
多くの事業所で利用者が減少。物品販売の機会の減少、受注業務の減少も多くみられ、利用者の工賃も減少していました。 - 今後の運営費や給付金、補助金等の減少への不安
- 手探りの感染対策、感染発生時の対応への不安
- 在宅勤務・テレワーク、ICT導入への積極姿勢
主な質問と回答は、以下の通りです。
なお、回答・集計はアンケート実施時の状況を受けたものです。その後、すでに支援策が動き出している場合があります。
職員等の状況
「新型コロナウイルス感染拡大の影響で職員等の状況に変化はありましたか」(複数回答可)の質問に対し、69.0%の事業所等が「職員等の疲労、不安、ストレスが増している」と回答。「職員等の勤務を減らした(一時帰休・自宅待機・出勤日・勤務時間等)」が60.4%、「家族の事情(休校等)で出勤できない・出勤しにくくなった職員等がいる」が42.9%でした。
Q13.新型コロナウイルス感染拡大の影響で職員等の状況に変化はありましたか
(複数回答可、245件の回答)
事業への影響
「新型コロナウイルスの感染拡大で、事業にどのような影響がありましたか」の質問(複数回答可)では、「利用者がふだんより減った」が70.2%、「事業を縮小した」が53.1%、「受注業務や売り上げが減少した」が58.1%でした。
Q9.新型コロナウイルスの感染拡大で、事業にどのような影響がありましたか
(複数回答可、258件の回答)
売り上げなどの減少幅
受注業務や売り上げの減少があったと回答した事業所等を対象に、「前年同時期と比べて、売り上げの減少幅はどれくらいですか」を聞いた質問では、50%以上の減少と答えた事業所が、この質問への回答の過半数(54.4%)を占めていました。
Q11.Q9で受注業務や売り上げの減少があった事業所にお聞きします。
前年同時期と比べて、売り上げの減少幅はどれくらいですか(169件の回答)
在宅勤務・テレワークの現状と導入予定
「職員等・利用者の感染防止のためにどのような対策をとっていますか」の質問(複数回答可)に対し、「時差出勤・分散利用を行っている」の回答が40.9%、「在宅勤務・テレワークの実施」が36.7%でした。加えて、今後予定している対策はどのようなものですか」の質問(複数回答可)」では、「時差出勤・分散利用を行う」の回答が37.2%、「在宅勤務・テレワークの実施」が27.5%ありました。
Q16.職員等・利用者・従業員の感染防止のためにどのような対策をとっていますか
(複数回答可、259件の回答)
Q17.今後予定している対策はどのようなものですか?
(複数回答可、247件の回答)
感染への不安
「職員等が感染することについて、どのくらい不安に感じていますか」「利用者等が感染することについて、どのくらい不安に感じていますか」の質問では、「大いに不安に感じている」の回答がそれぞれ69.2%、76.7%でした。
Q20.職員等が感染することについて、どのくらい不安に感じていますか
(257 件の回答)
Q21.利用者が感染することついて、どのくらい不安に感じていますか
(257 件の回答)
求める支援
「Q22.今、どんな支援を望みますか(複数回答可)」では、「感染予防のための物資の提供」が79.1%、「新型コロナウイルス対策に関する情報の提供」が59.3%、「財政面での支援」が48.1%、「業務や製品の受注」が33.3%でした。「リモートワークのための情報機器の提供」という回答は17.1%でした。
Q22.今、どんな支援を望みますか。
(複数回答可、258件の回答)
その他の声
- 利用者(スタッフも)の安全を確保することと、利用者の生活スタイルを維持することとのバランスのとり方の判断が難しく、正解がわかりません。事業を休止し自宅待機すれば、ある程度の身体の安全は図れますが、従来の生活が失われ、気持ちの不安定や体の不調も呼びかねないと考えています。
- 今の状況が理解できず、大変不安に感じている利用者さんがいます。
- 上階のマンション住人がテレワークで在宅の為、飛び跳ねや、声が迷惑らしく日に何度か上階から激しく床を叩く音が響いてくる。
- 福祉施設に対し、原則事業継続の方針が出ていたことは、職員の負担はあるが、利用者にとってはよかったと思う。
- 「自主休業」といっても、職員は出勤し、在宅支援、家庭訪問、再開(開所)に向けたコロナ対策をしており、過去に経験していないほど多忙であり、感染リスクを感じながらストレスのかかる毎日であった。
- 就労者がコロナの影響で解雇になり戻ってくるケースが相次いでいる。
- 事業を継続するためPCR検査や抗体検査を職員向けに迅速に行って頂きたい。
- 感染防止のためのアクリル板、消毒薬、マスク、非接触体温計、非接触ゴミ箱などを購入しており、コロナ感染防止に係る費用を別途補助して欲しい。
- 既存のグループホーム(共同生活援助)は感染症対策を盛り込んだ構造ではない中で、動線を分けることやトイレを分ける事、職員の泊まるスペースの確保、陽性者が出た際の会議室の確保等課題がたくさんあるように思う。
- 障害を持った方々がコロナウイルス陽性となった場合、安心して通院できるようにして欲しい。
「新型コロナウイルス感染拡大に伴う福祉現場の状況に関する緊急アンケート」概要
アンケートの目的
新型コロナウィルス感染症拡大で緊急事態宣言が出されていた5月下旬から6月にかけて、横浜市内の障害者関連事業所等の活動や運営に及ぶ影響についての実態を調査し、課題解決につなげていくためにアンケート調査が実施されました。
回答は集計・分析して関係者で共有すると共に、対象団体の活動支援や、要望・陳情活動、政策形成へ生かされています。
また、横浜市が市内NPO等と締結した「新型コロナウイルスへのオープンイノベーションによる課題解決に関する連携協定」に基づく取り組み「新型コロナウイルスに向き合う産官学民の共創プラットフォーム #おたがいハマ」と連携し、各団体で不足する物資・情報・技術等の支援につなげていく計画も動き出しています。
調査概要
実施期間:2020年5月21日(木)から6月1日(水)
実施団体:
横浜市障害者地域作業所連絡会
横浜市障害者地域活動ホーム連絡会
NPO法人横浜市精神障害者地域生活支援連合会
公益社団法人横浜市身体障害者団体連合会
協力団体:
(社福)横浜市社会福祉協議会・障害者支援センター
NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ
送付先 :実施団体の会員の事業所等
送付件数:444件
回答 :259件
調査方法:
実施団体より会員の事業所等に回答を依頼し、googleフォームを活用して各事業所が回答を入力する形で実施(一部、紙に記入された回答を協力団体において代行して入力した)
実施団体概要
▽横浜市障害者地域作業所連絡会(略称・市作連):市作連は、横浜市内の元運営委員会型地域作業所や地域活動ホームが連絡を取り合い、知識や情報を共有し、障害福祉の充実のために運動してきました。設立は1982年、会員構成は、機能強化型地域活動ホーム、地域活動支援センター、障害福祉サービス事業(生活介護や就労継続支援)で、結成38年目の現在では220カ所になっています。
▽横浜市障害者地域活動ホーム連絡会(略称:活ホ連):地域活動ホームは、「幼児から大人までを対象とし、障害の程度や年齢を問わず、様々な暮らしの支援を目的に、1980年に補助制度がスタートした、横浜市独自の制度です。現在、横浜市内には、機能強化型が23カ所、法人型が18カ所あります。地域活動ホーム連絡会は1985年に設立され、41カ所の会員で構成し、障害福祉の充実に取り組んでいます。
▽NPO法人横浜市精神障害者地域生活支援連合会(略称・市精連):市精連は、1987年に設立され、現在、地域活動支援センター精神作業所型、就労継続支援A・B型等の就労継続支援事業所、精神障害者グループホーム、生活支援センター等、172事業所で構成され、精神障害者の社会復帰と地域生活支援に取り組んでいます。
▽公益社団法人横浜市身体障害者団体連合会(略称・浜身連):浜身連は、1950年に設 立された神奈川県身体障害者団体連合会を前身とし、昭和60年社団法人化しました。この活動目的は、横浜市内に居住する身体障害者の社会参加促進、厚生援護等に関する事業を行い、身体障害者の自立を促進し、福祉の向上を図るとともに、障害者に対する社会の理解を深め、障害者の社会参加と平等な社会の実現を目指し、様々な取り組みを行っています。横浜市障害者社会参加推進センターとしての役割を担い、ハンディキャブの運営、ピア相談、パソコン相談室など、各種事業を行っています。