第28回絵本学会横浜大会、6月21日・22日に開催

絵本の未来と多様性を語り合う2日間

2025年6月、第28回絵本学会横浜大会が横浜市開港記念会館(横浜市中区本町1-6)で開催されます。「絵本の窓から世界を見る」をテーマに、絵本の未来や表現の多様性、広がる読者層について語り合う2日間となります。

絵本はかつて子ども向けのものとされてきましたが、近年ではその表現力や社会的価値が見直され、大人にも広がる文化となっています。絵本は物理的な手触りや形、開き方、匂いなど、五感で体験できる「モノ」としての実態を持ち、人と人をつなぐ力を持つメディアです。

絵本の特徴と広がる読者層

絵本は、サイズや形、飛び出す仕掛けや穴あき構造など、多様な形式が存在し、それらすべてが作家の表現の一部となっています。ページの「めくり」や色使い、構図、リズムも絵本ならではの芸術性を生み出します。

出版不況が続く中でも、絵本の出版点数は大きく減っていません。その理由の一つは、絵本が「五感で読む本」であり、デジタルにはない物質的な存在感があることです。また、絵本は親子や教師と生徒、保育士と園児など、複数人で共有される読み物であり、読み聞かせを通じてコミュニケーションを生む媒体でもあります。

1970年代以降、戦争や環境、貧困、ジェンダーなど社会問題を扱う絵本が増え、大人も読者として意識されるようになりました。簡略化された言葉の中に本質的な問いが込められ、絵本は多様性を受け入れるための入り口ともなっています。

言葉を超える絵本の力

絵本は絵を中心に据えているため、言語が簡略化され、伝わりやすいという特性があります。文字のない絵本や、ごく少ない語数で構成された作品も多く、多言語話者や外国人、障害を持つ方、識字能力の発達途中にある子どもなど、幅広い人々に受け入れられています。1冊の絵本が世界中で翻訳され、多言語で出版されることも珍しくありません。

広がる「絵本を読む場」

近年、絵本カフェや図書館の絵本コーナーが増え、地域には絵本を扱う書店やサロン、カフェが誕生しています。横浜市中央図書館にも子どもたちが絵本に親しめる新しいエリアが整備されました。こうした場所は、人が集まり語らうコミュニティの場としても機能しています。

絵本学会と横浜大会の見どころ

絵本学会は、日本で唯一の絵本に関わる学術団体で、研究者や作家、編集者、図書館員、保育士など多様な人々が会員となり、絵本の表現や教育、社会的意義を多角的に研究しています。年に1回、全国大会を開催しており、今年は横浜での開催となります。

会場となる横浜市開港記念会館は1917年完成の歴史的建築で、市民活動の拠点として親しまれています。大会1日目は、詩人・谷川俊太郎さんの追悼企画や、絵本作家・荒井良二さんのトークとサイン会、俳優・水野真紀さんと元NHKアナウンサー・野田英里さんによる朗読会など、多彩なプログラムが予定されています。

2日目は、新人作家による作品発表やテーマ別分科会、学術的な研究発表が行われ、まだ出版されていない下絵(エスキース)を披露する場も設けられます。編集者によるフィードバックも受けられ、絵本作家の登竜門的な位置づけとなっています。

また、「絵本でつながるケアとインクルージョン」「科学絵本について」「ブルーノ・ムナーリの絵本の独創性」など、3つのラウンドテーブル企画も注目されています。研究と表現、実践と創造、地域と世界、すべての視点が交差する大会となる見込みです。

<開催概要>

  • 名称:第28回絵本学会横浜大会
  • 開催日:2025年6月21日(土)・22日(日)
  • 会場:横浜市開港記念会館(横浜市中区本町1-6)
  • 主催:絵本学会
  • 後援:横浜市教育委員会
  • 参加費:会員1,800円(2日間通し)、一般1,800円(1日)/3,500円(2日間通し)、学生1,000円(2日間通し)
  • 申込:Peatix(https://ehongakkai28taikai.peatix.com)にて受付、締切は6月15日(日)22時まで。