令和6年度ヤングケアラー支援研修動画を配信中
横浜市が実施した「令和6年度ヤングケアラー支援研修」の動画が公開されています。第1回(6月26日開催)、第2回(8月9日開催)、第3回(8月21日開催)、第4回(10月17日開催)の録画を視聴できます。
ヤングケアラーとは、本来大人が担う家事や家族の世話を日常的に行っている18歳未満の子ども・若者を指します。
研修では、有識者や支援団体、元当事者らが講師として登壇し、ヤングケアラーの実態や支援のあり方について解説。全6回の研修を通じて、支援の輪を広げるための知識を深める内容となっています。
以下令和6年度横浜市ヤングケアラー支援研修のアーカイブ配信に関する情報です。この研修は、ヤングケアラーへの理解を深め、支援の輪を広げることを目的としています。
<研修概要>
- 目的: ヤングケアラーへの理解を深め、支援について考え、支える人を増やす
- 対象: 本来大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行っている18歳未満の子供
- 内容: 有識者、ヤングケアラー団体、経験者などによる講義や質疑応答
- 形式: 全6回の対面研修後、2ヶ月以内にアーカイブ配信
- 参加状況: 各回100名の定員に対し、多数の申し込みがあり、ほぼ満員
第1回:「ケアラーに優しいヨコハマにしよう!ご存知ですか?ヤングケアラーのこと」
講師:横浜創英大学看護学部 精神看護学 教授 横山恵子 氏
第2回:「国内のケアラー支援の実態、連携協働によるヤングケアラー支援」
講師:大阪公立大学現代システム科学研究科 社会福祉学分野 教授 濱島淑恵 氏
第3回:「10代で家族ケアを経験して ~ヤングケアラーの私が地域に願うこと~」
講師:YCARP子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト・小学校教諭 熊谷佳音 氏
第4回:「ヤングケアラー支援を通して ~これからのヤングケアラー支援に必要なこと~」
講師:認定NPO法人KATARiBA スタッフ 五味菜々緒 氏
今後、第5回、第6回の録画も順次公開される予定です。各回の詳細や視聴リンクは以下の通り。
話者
- 藤浪博子氏(横浜市子ども青少年局 子ども家庭課長)
- 横山恵子氏(横浜創英大学 看護学部精神看護学教授)
1. ヤングケアラーとは?
ヤングケアラーは、本来大人が担う家事や家族の世話を日常的に行っている18歳未満の子どもを指す。横浜市ではこの問題への理解を深め、支援を広げるために研修を実施している。令和4年度には、市内公立学校の小5・中2・高2の生徒約7万5000人を対象に実態調査を行った。その結果、世話をしている家族がいると回答した割合は、小5で20.3%、中2で14.1%、高2で5.3%と判明した。
2. ヤングケアラーの抱える問題
調査によると、ヤングケアラーの多くが「誰に相談すればいいかわからない」「相談しても状況が変わらない」と感じている。特に高校生になると、世話の内容がより負担の大きいもの(障がいのある家族の介護や心のケアなど)になる傾向が見られる。また、勉強時間の確保が難しく、進学や就職にも影響を受けるケースが多い。
3. 横浜市の支援策
横浜市はヤングケアラー支援として、①啓発活動(特設サイト・ポスター・カード配布)、②研修(教育関係者・支援者向け)、③支援団体への補助(ピアサポート・オンラインサロン運営など)、④LINEを活用したSNS相談の開始などを実施している。特に、支援が届きにくい子どもたちへのアプローチを強化している。
4. 精神疾患を抱える親の子どもたちの現状
ヤングケアラーの中でも、特に精神疾患を持つ親の世話をする子どもは多く、全国調査では中2の約17%、高2の約14%が親をケアしていると回答した。これらの子どもは、親の情緒的ケアも担っており、長期間にわたる精神的ストレスを抱えることが多い。大人になっても自分の感情を抑え込んだり、人に頼ることができないという生きづらさを抱えるケースがある。
5. 社会全体での支援が必要
ヤングケアラー支援には、単に子どもをサポートするだけでなく、家庭全体への支援が必要である。また、社会全体でヤングケアラーの存在を認識し、相談しやすい環境を整えることが求められる。学校の先生や地域の支援者が「話を聞く」「気にかける」ことで、子どもが孤立しない環境を作ることが重要だ。
話者
- 浜島義江氏(大阪公立大学 現代システム科学研究科 社会福祉学分野 教授)
1. ヤングケアラーの定義と実態
ヤングケアラーとは、本来大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行っている18歳未満の子どもを指す。彼らの支援が社会課題として認識されるようになったのは近年のことで、全国調査では高校生の約5%がヤングケアラーに該当することが示された。介護、障害のある家族の世話、通訳など、その背景は多岐にわたる。
2. ケアの影響と見えにくさ
ケアの内容には家事、見守り、感情面のサポートが多く含まれるが、これらは「お手伝い」と誤認されやすく、周囲が負担に気づきにくい。時間の制約や精神的負担が学校生活や健康に影響を及ぼし、不登校や成績低下、慢性的な疲労、精神的な不安定を引き起こすことがある。
3. 支援の必要性と課題
ヤングケアラー支援の法整備が進みつつあるが、実際の支援はまだ十分ではない。本人が「自分がヤングケアラーである」と認識していないことも多く、学校や地域の大人が気づき、適切な支援につなげることが求められる。ヤングケアラーが持つ役割は家庭環境によって変化しやすく、支援のタイミングが重要である。
4. 支援のアプローチ
① 気づくこと:普段の生活の中で「ケアを担っているかもしれない子ども」を意識し、声をかける。
② 家族支援との連携:ヤングケアラーがケアする家族を支える仕組みを整え、福祉サービスにつなげる。
③ 本人支援:レスパイト(休息)や学習支援、仲間との交流機会を提供し、精神的な負担を軽減する。
④ 多機関連携:学校、福祉、医療、地域の支援団体が協力し、継続的なサポート体制を構築する。
5. ヤングケアラー支援の未来
ケア自体には価値があるが、負担が過度になれば子どもの人生に深刻な影響を与える。社会全体でこの問題に取り組み、支援の充実を図ることが必要。ヤングケアラー支援はまだ始まったばかりであり、学校・地域・行政が連携しながら、より包括的な支援体制を整えていくことが求められる。
話者
- 熊谷佳音氏(YCARP子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト・小学校教諭)
1. ヤングケアラーの実態と課題
ヤングケアラーとは、本来大人が担う家事や家族の世話を日常的に行っている18歳未満の子どもを指す。しかし、現実には18歳を超えてもケアを続ける若者ケアラーも多い。話者自身も母のうつ病や兄の発達障害、家族の暴力などに直面しながら家庭を支えてきた。ケアを担うことで学業や進路、自己肯定感に大きな影響が及ぶ。
2. 支援の必要性と現状の課題
ヤングケアラーの存在は可視化しにくく、学校や周囲の大人が気づきにくい。支援制度も十分ではなく、特に経済的支援や家事・育児支援の不足が課題。アンケート調査や定期的なヒアリングはあるが、それだけでは十分に実態を把握することが難しい。また、家庭内の問題を他者に話すことへの抵抗感があるため、支援につながりにくいケースが多い。
3. 当事者が求める支援の形
ヤングケアラーが本当に必要としているのは「心のよりどころ」と「実生活のサポート」。例えば、無料の食事提供や洗濯支援、学習支援などのハード面の支援があれば、家庭での負担が軽減される。また、相談できる大人の存在や当事者同士のつながりも重要。実際に話者が所属する「Yカープ」などの当事者コミュニティは、支援を求める子どもたちの大きな支えとなっている。
4. 語ることの意義とリスク
ヤングケアラーの経験を語ることで社会の理解を広げることは重要だが、一方で支援者や一般社会が「ヤングケアラー=かわいそうな存在」と固定的に捉えてしまうリスクもある。また、当事者が「自分は他のヤングケアラーほど苦労していない」と経験を過小評価してしまうケースもある。支援する側は、一人ひとりの状況の多様性を理解し、押し付けにならない関わり方を意識することが求められる。
5. 今後の支援のあり方
ヤングケアラーを支援するためには、一時的な対策ではなく、継続的な支援が必要。特に、家族の状況が変化し続ける中で、ライフステージごとに必要な支援を提供する仕組みを整えることが求められる。また、地域の支援体制の強化や、学校・自治体・NPOなどの連携が不可欠。最終的には、「支援が必要な子どもが当たり前に頼れる社会」を目指すことが重要である。
話者
- 五味菜々緒氏(認定NPO法人KATARiBA(カタリバ) スタッフ)
1. ヤングケアラーが抱える複雑な葛藤
ヤングケアラーの子どもたちは、家族を支えたいという気持ちと、自分の人生を歩みたいという思いの間で揺れ動いている。例えば、家族の世話を「当たり前」と思っているために、支援を求めることが難しいケースが多い。相談の場があっても、自ら困っていることを認識しづらく、適切なサポートを受けにくいという課題がある。
2. 支援の方法と伴走支援の重要性
「困っている人集まれ」と呼びかけてもヤングケアラーはなかなか集まらないため、従来の福祉支援とは異なるアプローチが必要となる。語り場では、オンラインでの伴走支援を通じて、子どもたちに信頼できる大人との対話の場を提供している。また、家庭全体を支える仕組みが求められ、保護者向けの支援も同時に実施している。
3. ヤングケアラー支援における具体的な事例
・Sちゃん(高校生): 末期がんの母親を介護しながら生活。学校での支援が逆に負担となり、転校を余儀なくされた。
・Kちゃん(小学生): 認知症の祖父の介護を突然任され、家庭内の役割が急激に増加。支援者と対話を重ねる中で、負担と向き合う術を模索。
・Aちゃん(高校生): 精神疾患の母を支えながら家事や妹の世話を行う。料理を趣味としつつも、自分の未来に不安を抱えていた。支援を通じて、免許取得や進路決定を後押しされた。
4. これからの支援に必要な視点
ヤングケアラーを「支援すべき存在」としてだけ見るのではなく、彼らの気持ちや家族の思いを尊重することが重要である。家族全体を支える仕組みを作ることで、ケアの負担を分散し、子どもたちが自分の人生を選択できるようにする。また、関係機関や支援者同士がつながりを強化し、包括的な支援体制を整えることが求められる。
YouTube動画情報
動画タイトル: 令和6年度ヤングケアラー支援研修(第1回 アーカイブ配信)ケアラーに優しいヨコハマにしよう!ご存知ですか?ヤングケアラーのこと
投稿者: 横浜市
https://www.youtube.com/watch?v=sWk02Z1IuD8
令和6年度ヤングケアラー支援研修(第1回・第2回・第3回・第4回)動画配信中!★第4回を追加掲載しました!
https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/ikusei/youngcarer/yckensyu2024.html