【インタビュー】金沢区の「魅力」をぎゅーっと詰め込んだご当地かるた『カナかる!』座談会

アナログゲームで金沢区を遊ぼう!

機器を使用せずに室内で複数人で楽しめるアナログゲーム。
あなたは遊んでみたことはありますか?

誰もが聞いたことがある有名なものとしては、トランプやオセロ。チェスや将棋。ボードゲームであれば、人生のあらゆる場面を面白おかしく、そして巧みに表現したゲームが有名です。アナログゲームは、いま、コロナ禍を経て多くの人から注目を浴びているそうです。

筆者も、埼玉県飯能市を舞台に『地方想生アイディア発想ゲーム~埼玉県飯能市編~』を2022年3月に制作し、今年度は、同ゲームの横浜市中区版の制作を構想しています。

ゲームを制作することは非常に大変で地道な作業です。ついに完成をした『カナかる!』の良いところや、『カナかる』企画・運営チームの体験談をぜひオープンに、多くの人に知っていただくことができたらいいなと思い、この度取材をしたいと思いました。

 

『カナかる!』とは、横浜と逗子・鎌倉などの湘南エリアに挟まれ、海辺を有した自然や歴史的資源に恵まれた、風光明媚な横浜市金沢区の魅力を子ども目線で楽しく気軽に伝えたいという想いから、「ご当地かるた」の制作プロジェクトです。

横浜市金沢区の「魅力」をぎゅーっと詰め込んだご当地かるた『カナかる!」は、3人以上で遊ぶことができ、1人が読み手となって進めます。絵がゆるく、ネタもクスっと笑えちゃう、とても面白くてワクワクするかるたです。

『カナかる』企画・運営チームにお話を伺いました。


横浜市金沢区 ご当地かるた『カナかる!』https://www.kanakaru.com/

 


インタビュー時の様子

 

▼インタビューに参加された『カナかる』企画・運営チームのみなさん

・山﨑 真実さん(デザイン・アートディレクション・隊長)
・浅葉 弾さん(ネタ・イベント担当)
・たけおか のぞみさん(PR担当)
・二見 翼さん(イラスト原画・営業)
・渡邉 紀さん(会計・マーケティング)

 

 

郷土かるた創作で金沢区再発見

『カナかる』企画・運営チームは2023年4月23日より、横浜市金沢区ご当地かるた「カナかる!」の販売を開始しました。

同日、アサバ・アートスクエアにて「完成おひろめ&第1回カナかる!大会」を開催し、150名以上のご来場と75名の大会参加があり、想像以上の笑顔と熱量で、大盛況のお披露目会となりました。

 

 
「完成おひろめ&第1回カナかる!大会」の様子①



「完成おひろめ&第1回カナかる!大会」の様子②

 

普段、デザイナーとディレクターとして働く、クリエイターの山﨑真実さん。
ご出身は埼玉県です。

ーーー『カナかる!』を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

山﨑:「埼玉県の郷土かるたを子供の頃、地区対抗で行った経験があります。この郷土かるたは、私にとって埼玉の色々なことを知るきっかけになり、地元のモノ・コトが遊びを通して、頭に染み込んでいきました。月日は流れて、2年前くらいに、伊東温泉の「全国枕投げ大会」の存在を知り感化されたんです。金沢区は、横浜で唯一の浜辺を持つ海、歴史的資産、レジャー施設、工業団地などその豊な資源と多様性を可視化し、伝え、また、競技として街を盛り上げられる「かるた」を創りたいと思ったのがきっかけです。」

この経験から、「カナかる!」創作プロジェクトを立ち上げる事を志したそうです。子どもの印象に残ることがとても重要だと考え、幼い頃に軽くでも地元を知るきっかけをつくれば自然と愛郷心が育まれ、暮らしに楽しみが生まれる、と、意気込みます。

埼玉県内全体の郷土かるた数で、埼玉県内全体の郷土かるたは、28個もあり、日本全国で一番の数を誇ります。(引用:全国の郷土かるた|郷土かるたコレクション) https://carta.media.gunma-u.ac.jp/all_over/index.html

横浜市内にも「ふるさと港南の歴史かるた」や「ふるさと歴史かるた 横濱歴史イロハかるた」など、郷土かるたは存在します。『カナかる!』も、郷土かるたシーンに名前が残り、コレクションのひとつに載ることができるかもしれません。

 

浅葉弾さんは、コロナ禍の直前に地元の金沢区に帰郷。「金沢区」と「子どもとアート」が生業。今回のプロジェクトの誘いを受け、「ネタ」担当として参加しています。

 

ーーー「ここがいい!ここを見て欲しい!」と思うポイントを教えてください。

浅葉:「イラストの表現を見て欲しいです。おお!そんなのがあったのか!と、地元民でも再発見ができるネタを前提に、フッと笑ってしまうイラスト表現を大切にしました。これがカナかる!の特長だと思います。」

二見翼さんは、金沢区並木出身。都内に住んでいたこともあり、地元を顧みたときにもっと魅力を発信したいと考えました。元から住む人は金沢区を好きな人が多いと感じるけれど、住んでいない人は金沢区の魅力を感じていないかもしれないので、もっと金沢区の魅力を発信したい!と、イラストの原画を担当しました。

イラストを描くことははじめての経験です。他に、渉外的な役割として、販売交渉や売り込みなどの営業等の担当などもしています。

二見:「はじめて描いたのですが、一つひとつ鉛筆で必死に46枚の原画を描くのはすごく大変でしたが、がんばりました!改めて金沢区を勉強する機会になりました。」

 

 

みんなでフッ笑えるユーモラスな絵札と読み札

浅葉さんのネタを元に、イラスト原画担当の二見さんが絵札のアイデアを考え、山﨑さんが絵のブラッシュアップや全体のデザインにまとめていきました。

『カナかる!』は、総じて、浅葉さんのもつ太陽のような個性やポジティブ表現でネタをつくり、絵描きではない二見さんのユーモアや拙さが残る絵の表現で、子どもにヒットする世界観をつくりあげました。どのカードもひとつひとつ丁寧につくられ、魅力的でした。

例えば、歌川広重(うたがわ・ひろしげ)のカード。歌川広重は金沢区民にとって神さまのような存在だそう。歌川広重が金沢区民に向けて「よかったね」とつぶやく表現のように、フッと笑ってしまうゆるい表現が多くのカードに含まれています。


歌川広重のカード(一番左)と句に注目

 


『カナかる!』の色んなカードと句|「完成おひろめ&第1回カナかる!大会」の写真から

 

金沢区民と歌川広重と歴史に対する意識

ーーー歌川広重は、金沢区外で暮らすインタビュアーにとって全く意識をしていない存在だったこともあり、金沢区の義務教育で習う事項なのでしょうか?

渡邉:「小中高に金沢区内で教育を受けてきたけれど、習う機会はなかったです。でも存在は知ってました!」

 

ーーー金沢区民の金沢区の歴史に対する意識について気になります。

渡邉:「私は、現状として歴史的な思い入れがないかもしれない…。

浅葉:「金沢区には、由緒あるお寺はあるが、鎌倉ほどではない。ご高齢の方は歴史に興味はあるが、他の世代にはそこまで金沢区の歴史に対する意識はあまりないと思います。申し訳ないけど、少し中途半端(笑)地元の人間が歴史をすごく誇りに思っているわけではないかも…。金沢区の歴史は確かに面白いし、誇りに思うべきだけど、重点を置くのは違うかもしれない。歴史の打ち出しだけだと現代の子どもたちはついていけない…と思っています。」

 

 

創作時の苦労と継続へのカギ

ーーー『カナかる!』創作プロジェクトを進める上での苦労は?

浅葉:「ネタづくりに苦労しました。SNSで一般から募集したけれど、もうひとひねりが欲しいというところが本音。金沢区のどの町内の人がみても分かるバランスを調整するのはとても難しかったし、もしも第二弾を作るなら、もっと地元にフォーカスするかも?」

渡邉:「クラウドファンディングに参加して応援してくれた人達の『カナかる!』への期待にどうやって答えていったらいいのか?と考えています。コンテンツが盛り上がると多様なニーズが生まれてくるが、それをうまく長く継続していきたいです。古くも面白い形になったものを続けていくにはどうしたらいいのでしょうね。」

山﨑:「その答えは何ですか?」

渡邉:「(山﨑)隊長の感覚を上手くさばいていくことに着いていきます!」

 

渡邉さんが、『カナかる!』の活動に参加したのは、2023年の3月から。子育てをしながら、5年ほど金沢区の写真をInstagramで載せている中、『カナかる!』に出会いました。

クラウドファンディングから参加し、その後チームに、「会計」という立場・役割で参加することになりました。普通のサラリーマンが地域活動に参加していく中で、世界が広がっていった!と笑顔で話します。渡邊さんは「並木めぐり」という金沢区の素敵な写真をアップする、Instagramのアカウントを運営しています。

みなさんの信頼しあえる関係性と『カナかる!』への情熱を感じとることができました。

 

 

本気と気楽で目指せ、金沢区のカルチャー

ーーー山﨑さんはコミュニティビルダー。チームのモチベーションのマネジメントがこれから大事になってくると思います。チームの共通目的はどういったものでしょうか?

山﨑:「『カナかる!』を普及させ、区の文化にすることが目的です。そのためには、長く続けることが必要だし、持続可能な取り組みにしていくのがポイントです。渡邉さんに入って貰ってそういったノウハウや資金面の持続性も上手くやっていきたいです。継続してやってゆく為に、「本気と気楽」はみんなで共有しています。区の文化にする目的で進んでいますが、その中で外からの色んな働きかけや可能性が見えたり、その創作プロセスやメンバーそれぞれの力の融合で作り上げていく感覚が楽しいです。」

二見:「ゴールは一緒。金沢区のカルチャーになって欲しいです。5人なら何でもできると思っているし、かるたじゃなくても他にやってみたいこともある!」

 

 

ハートを動かす12cmのコミュニケーションツール

たけおかのぞみさんは、2児の母。普段は、一般社団法人夢ラジオ・株式会社わたしたちでご活躍。2022年5月くらいに『カナかる!』プロジェクトの誘いを受けて、「PR」担当として参加しています。

たけおか:「引っ越し先がたまたま金沢区で、全然知らない場所に住んじゃったって感じでした。引っ越してきて最初は友達も知り合いもいませんでした。『カナかる!』は、コミュニケーションのツールになったなぁと感じています。ここの場所は昔こうだったんだよ!など、これがあるだけで盛り上がれるし、世代を超えたコミュニケーションを誘います。兵庫県加古川市の友人家族までが『カナかる!』を楽しんでおり、加古川でも作りたいと思っているそうです(笑)金沢区内の新しくできたカフェなどに、かるたの話をすると置いてくれるようになったり、『カナかる!』そのものが地域のムーブメントを作るきっかけになっています。」

山﨑:「おひろめ会で、この12cmの小さな箱が本当に人やまちのハートを動かすツールになりえること実感しました。」

 

金沢区の魅力は、歴史だけに留めるにはもったいないほど、動物園・水族館・ショッピングモールなど何でも揃っていて、便利な環境です。子どもたちも『カナかる!』を通じ、金沢区の歴史以外の、金沢区の魅力を学ぶことができたら、金沢区の歴史について触れてみたい意識が育つかもしれません。

『カナかる!』は老若男女を問わず楽しめ、越してきたばかりの人も金沢区を知るツールとして、コミュニケーションをとり、コミュニティがつくられてゆくきっかけとして、区民の手に渡っていくのではないでしょうか。今後の動きが楽しみです。

 

今年度も楽しい企画を予定しているので、「カナかる」の発信を要check!

笑顔が素敵な「カナかる」企画・運営チームのみなさん①

 

カナかる」企画・運営チームのみなさん②

あとがき

「カナかる」企画・運営メンバーそれぞれの人柄とチームワークが、横浜市金沢区に素敵なムーブメントを起こそうしているーーー

そんな場面に直面し、とても学びの多いお話でした。地域で、多様なステークホルダーを巻き込んでムーブメントを起こすのは、本当に!大変なことです。

『カナかる!』が、完成したのが2023年3月末。大盛況だった4月の「完成おひろめ&第1回カナかる!大会」。現在は、複数店舗で委託販売され、webショップでも購入が可能です。

毎年、公式の「カナかる!大会」を開催し、チャンピオンを選出するアイデアがあるので、ぜひそれまでの間に『カナかる!』でたくさん遊んで、次年度のチャンピオンを目指してみませんか。私も『カナかる!』で、たくさん遊んでみようと思います!

横浜市金沢区 ご当地かるた『カナかる!』web購入はこちらからどうぞ!

https://www.kanakaru.com/

参考)『地方想生アイディア発想ゲーム~埼玉県飯能市編~』

 

文・編集:永井楓(LOCAL GOOD YOKOHAMA / 地方想生アイディア発想ゲーム)